私の子どもの頃、人の近くにたくさんの生き物がいました(「となりのトトロ」のお話で
サツキとメイがトトロに出会っていた時代にあたります)。そんな頃に心と身体にしみつい
た歌は、“…岸のすみれやれんげの花に…えびやめだかや小ぶなの群れに…”(「春の小川」)、
“ほたるの宿は川端柳…川のめだかが夢見る頃はほ・ほ・ほたるが灯をともす”(「蛍」)、
そして「赤とんぼ」・・・。今も、胸にジーンときてしまいます。こんな情感からでしょうか、
“生物多様性”について考え続け、市内でボランティアの親子自然教室などを続けてきました。
当稲沢市祖父江町地区には、今も自然自生している田んぼのホタルがわずかに残っており、
会員がもう15年以上も綿密な生息調査を続けています。その様子を横目で眺めていたところ、
お誘いがあって2012(平成24)年、本会に入会することになりました。
ホタルもまた、日本人が古来より格別心をひかれてきた生き物のひとつ、蛍・螢・火垂る・
火太郎・・・。
● こゑはせで身をのみこがす蛍こそ いふよりまさる思なるらめ
(源氏物語 蛍の巻)
● 己が火を木々に蛍や花の宿 (芭蕉)
● 人寝ねて蛍飛ぶなり蚊帳の中 (子規)
ホタルがたくさんいる所には、いろいろな生き物が生息できる環境要素があります。
人間にとっても安全で健康的な環境と言えますし、心をも癒します。よって、地域の文化や民
俗文化に大きな影響を与えてきました。ところが、祖父江のホタルも2000年頃から急激に
生息数も生息場所も減少しているようです。これは、赤とんぼアキアカネの減少とそっくりです。
「土地改良」の用排水分離による水利環境の変化は、水生生物にとっては非常に厳しく、その数
は大きく減少しました。もともと田んぼで育つメダカが、今や、絶滅危惧種になっているのもう
なずけますが、この十数年で祖父江のホタル(田んぼのホタル:ヘイケボタル)や赤とんぼが激
減していることに目を向けてみたいと思います。
◆ そこで、私たちは2013(平成25)年から新しいプロジェクトを始めました。
「実験田プロジェクト」です。ホタルの生息調査はこれまで通り進めますが、一方で、絶滅寸前の
祖父江のホタルを含めた生物多様性の復活をめざす環境保全型水田での実験です。まず、水田内に、
昔のように木の板と杭を使って魚留まり水路を作りました。生き物が田んぼと水路を行き来できる
ような工夫です。 (詳細は「実験田プロジェクト」をご覧いただきたいと存じます)
このプロジェクトは稲沢市教育委員会の後援を受け、調査・研究にあたっては、岐阜大学応用
生物学部水利環境学研究室の指導を受けながら協働研究を進めています。また、近隣の大学や高
等学校との協働で推進していきます。
これを私たちの会だけのものとするのではなく、他の団体や個人と協働して研究・研鑽する希望を
もっています。この企画・実践は市内小中学校の学習にも貢献したいと各学校へのお知らせをして
おり、これまでも市内の数校で環境学習を進めています。
この水田でとれるのは米だけでしょうか。ここで若い方がさまざまアイデアを出し、体験しながら
面白さを見つけ出してくだされば、やがては大きな力となって豊かな自然環境が復活できる、地域
の活性化にもつながる。そう信じて、私ももうしばらく老体?に鞭を打ってみたいと思っています。
今の若者が、心から日本の唱歌「ふるさと」をしみじみ歌い続けられることを願って。
NPO法人 祖父江のホタルを守る会 理事長